介護の仕事をしていると避けて通れないのが認知症の方への対応です。
認知症の方の対応は大変なことも多いですが、基本的な知識を持っていれば、対応の仕方も変わってきます。
今回は、認知症の中でも多いと言われるアルツハイマー型認知症について解説していきたいと思います。
アルツハイマー型認知症とは
認知症の約半分がアルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、介護の仕事をしていなくてもほとんどの方が一度は耳にしたことがあると思います。
認知症は大きくわけるとアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症の4つに分類されますが、現在日本で最も多いのがアルツハイマー型認知症で、認知症の約半分がアルツハイマー型認知症だとも言われており、現在でも増加傾向にあります。
アルツハイマー型認知症の原因となる病気はそのまんまアルツハイマー病と言って、1906年にドイツの精神科医、アルツハイマーによって発見された病気です。
年齢を重ねるごとに発症の危険性が高くなり、男性よりも女性の方が多く見られます。
海馬を中心に脳全体が萎縮
しかし、原因や治療法などは現在でも明らかになっておらず、アルツハイマー病、またはアルツハイマー型認知症を治したり改善したりすることは、現在の医学ではできないとされています。
アルツハイマー病になってしまうと、脳の中の記憶を司る海馬(かいば)という所を中心に脳全体が萎縮していきます。
加齢によっても脳は少しづつ萎縮しますが、アルツハイマー病の萎縮のスピードは明らかに早いようです。
アルツハイマー病は10年単位と言う長い時間をかけて脳内に老人斑(ろうじんはん)と呼ばれるシミのようなものが作られます。
その後、さらに10年から20年位の長い時間をかけて脳の神経細胞の中にある神経原線維変化(しんけいげんせんいへんか)と呼ばれる糸くずのような物が溜まっていくのですが、これがアルツハイマー病では異常に蓄積されます。
この2つの病変が脳の死滅や変性に深く関わっている事がわかっています。
アルツハイマー型認知症の進行
アルツハイマー型認知症ははっきりと発症した時期が判明しません。
気づいた時には、物忘れがひどくなっていたり、そのせいで不安感や恐怖感を感じたり、何をするにもやる気が出ないなどの症状が表れていることが多いようです。
この段階がアルツハイマー型認知症の初期の段階で、「物盗られ妄想」が出てくるのもこの時期が多いです。
中期は幻覚、幻視、妄想、徘徊、暴力行為などが見られるようになり、時間や場所、今が何月何日なのかもわからなくなる等、初期の段階よりも認知機能の低下が目立つようになります。
中期は短い人で4年から5年ほど続くと言われていて、その後、後期に入っていきます。
後期では排泄、食事、入浴等、日常生活のほぼ全てに介助が必要になり、会話が成り立たないばかりか、自分の名前も家族の名前もわからない等、認知機能は更に低下します。
脳が萎縮し、運動機能も低下するので、次第に歩行が困難になり、寝たきりの状態になります。
アルツハイマー型認知症の進行を遅らせるには
先ほども言ったように、現在アルツハイマー型認知症を治療する手段は現時点ではありません。
ですが、進行を遅らせる方法はあります。
一つは薬による方法。
もう一つは薬物を使わない方法です。
「薬を使わないで進行を遅らせれるって本当?」と疑問に思ってしまうかもしれませんが、アルツハイマー型認知症に限らず、認知症は何らかの理由で脳の機能が低下することで起こりますが、その周辺の症状には心理状況や生活の状況なども深く関わっていることがわかってきました。
アルツハイマー型認知症になってしまうと、まず物忘れが多くなるので、それにより、人との約束ができなくなるので人付き合いに消極的になっていきます。
家に閉じこもり気味になるため、社会との繋がりも減ります。
家にいても何度も同じ事を言ったり聞いたりするので、家族に怒られたりして居場所がなくなり、孤独感でいっぱいになる事もあるでしょう。
このような心理状況になると、脳の病変よりもアルツハイマー型認知症の進行に影響する場合が多いのです。
そこで必要になってくるのがリハビリテーションです。
様々な種類のリハビリで心や体、脳に刺激を与える事によって自信や生きがい、やりがいを取り戻すことができます。
なので、普通の人が考えるケガから復帰するためのリハビリとはちょっと違ってきます。
現在、認知症のケアをしている介護施設で代表的なのは「回想法」と言う心理療法です。
認知症の利用者さんが5人から10人のグループになり、子供の頃流行った物、子供の頃の遊び、昔の映画、昔の学校の話、戦争の話などテーマを決めて思い出話をしてもらいます。
実際の昔の遊び道具や資料映像なんかもあるとリアリティが増してさらに良いでしょう。
昔の話をすることによって、自分のこれまでの記憶を思い出すために脳を使うので、脳が活性化され、他の利用者さんと会話し、共感する事で不安感が少なくなり、感情も適度な刺激を受けます。
厚生労働省が行った調査や様々な施設での研究の報告によると、コミュニケーション能力の向上や、意欲の向上、感情表現が豊かになり、表情が明るくなったなどの効果が認められています。
この回想法は1対1でもできるので、家庭でも簡単に行うことが可能です。
介護の仕事をするなら知っておきたいアルツハイマー型認知症の知識のまとめ
では最後におさらいもかねてここまでの要点をまとめていきたいと思います。
- 認知症は大きくわけると「アルツハイマー型認知症」、「レビー小体型認知症」、「脳血管性認知症」、「前頭側頭型認知症」、の4つにわけられ、現在日本で最も多いのがアルツハイマー型認知症で、認知症の約半分がアルツハイマー型認知症と言われており、現在でも増加し続けている
- アルツハイマー型認知症の原因となる病気はアルツハイマー病と言って、年齢を重ねるごとに発症の危険性が高くなり、男性よりも女性の方が多く見られる
- 原因や、治療法などは現在でもわかっておらず、アルツハイマー病、またはアルツハイマー型認知症を治したり改善したりすることは今の所は出来ない
- アルツハイマー病になってしまうと、脳の中の記憶を司る海馬(かいば)と言う所を中心に脳全体が萎縮して行く
- アルツハイマー病は10年単位と言う長い時間をかけて脳内に老人斑(ろうじんはん)と呼ばれるシミのような物が作られ、その後更に10年から20年位の長い時間をかけて脳の神経細胞の中にある、神経原線維変化(しんけいげんせんいへんか)と呼ばれる糸くずのような物が溜まっていくのですが、これがアルツハイマー病では異常に蓄積される、この2つの病変が脳の死滅や変性に深く関わっている事がわかっている
- アルツハイマー型認知症ははっきりと発症した時期が判明しない
- 「物盗られ妄想」が出てくるのはアルツハイマー型認知症の初期の段階
- 中期は短い人で4年から5年ほど続くと言われている
- 後期では、脳が萎縮し、運動機能も低下するので次第に歩行が困難になり、寝たきりの状態になる
- アルツハイマー型認知症を治療する手段はないが進行を遅らせる方法はあり、一つは薬による方法で、もう一つは薬物を使わない方法
- 認知症は何らかの理由で脳の機能が低下することで起こるが、その周辺の症状には心理状況や生活の状況なども深く関わっている事がわかってきた
- 様々な種類のリハビリで心や体、脳に刺激を与える事によって自信や生きがい、やりがいを取り戻すことができる
- 認知症のケアをしている介護施設で代表的なリハビリは「回想法」言う心理療法
- 回想法は認知症の利用者さんが5人から10人のグループになり、子供の頃流行った物、子供の頃の遊び、昔の映画、昔の学校の話、戦争の話などテーマを決めて思い出話をしてもらう
- 回想法は、厚生労働省が行った調査や様々な施設での研究の報告によると、コミュニケーション能力の向上や、意欲の向上、感情表現が豊かになり、表情が明るくなったなどの効果が認められている
いかがだったでしょうか。
介護の技術も大事ですが、基本的な知識を持つことで認知症の方への接し方が変わってくると思います。
今後も認知症の利用者の方は増えてくると予想されますので、基本的な知識は押さえておきましょう。
参考:介護職員初任者研修教材
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