介護職の基礎知識

介護の仕事をするなら知っておきたい脳血管性認知症の知識

介護の仕事で避けて通れない認知症は大きく分けると4つの種類に分類されます。

前回は認知症の中でも多いと言われるアルツハイマー型認知症について解説しましたが、今回はその次に多いと言われる脳血管性認知症について解説したいと思います。

脳血管性認知症とは

脳血管性認知症とは、その名の通り、脳の血管に何らかの異常が起きて起こる認知症です。

その中でも脳血管性認知症を引き起こす代表的な脳血管障害は脳卒中(のうそっちゅう)です。

脳卒中と言っても種類があり、一般的には以下の3つに分類されます。

脳梗塞(のうこうそく)

脳梗塞は、脳の動脈硬化により血管が狭くなったり、血栓という血の塊が出来ることで血管が詰まることによって起こります。

それ以外にも、心臓など、脳とは他の場所に出来た血栓が血流に乗って脳まで行ってしまい、それが血管を詰まらせて起こる場合もあります。

どちらにせよ、詰まった先には血が回らなくなるため、脳の神経細胞は栄養不足と酸素不足を起こし、死滅したり、働きが低下してしまいます。

脳出血

脳出血は、脳の血管の動脈硬化や高血圧の状態が長く続く事で血管が弱くなり、弱くなったところが破れて出血します。

出血した血液は血種(けっしゅ)と言われる塊を作り、これが脳を圧迫することによって圧迫された部分の神経細胞を破壊して起こります。

くも膜下出血

くも膜下出血は、脳の中のくも膜と言う膜の下で出血が起こるものを言います。

くも膜下出血は、くも膜と軟膜の間に血種が出来ることにより神経細胞を圧迫し死滅させていきます。

このような脳卒中はほとんどが激しい頭痛をともない発症するのが特徴的と言えますが、中には本人が全く気付かないほど小さい脳梗塞を何度も繰り返している内に認知症になっていたなんて場合もあります。

実際に私のおじも健康診断を受けて脳梗塞があることがわかり、手術を受けました。

このような脳梗塞や脳出血は、動脈硬化や慢性的な高血圧、高脂血症(こうしけっしょう)、糖尿病と言った生活習慣病が原因です。

脳血管性認知症の進行

脳血管性認知症は脳卒中の激しい痛みが引き金になって発症するので、アルツハイマー型認知症と比べて発症時期がはっきりしている場合が多いです。

ですが、気づかないような小さい脳梗塞を何度も繰り返している場合は時期の特定は難しくなります。

脳血管性認知症の場合、アルツハイマー型と比べて物忘れよりも先に意欲が無くなったり、何事にも関心が無くなったりする場合が多いようです。

脳血管性認知症の場合は脳がダメージを受けた場所によって症状が異なりますが、よく見られる症状は実行機能障害です。

実行機能障害により、仕事の要領が悪くなったり、料理が作れなくなったり、リモコンの使い方がわからなくなったりなどの問題が起こってきます。

他には、精神的に不安定になりやすく、些細なことで激怒したり泣いたりするなど、感情を上手くコントロールすることができず、感情失禁も良く見られるようになります。

脳がダメージを受けた場所によって症状が異なるのですが、例えば「記憶力はのしっかりしているけども、料理は作れなくなった」とか「人の話はちゃんと理解しているけどテレビのリモコンを使えない」などです。

このように、脳血管性認知症は認知機能がまだらに障害されるので、別名「まだら認知症」とも呼ばれる事があり、このような症状が数日周期で変動してみられるのも特徴です。

アルツハイマー型認知症は進行が数年かけてゆっくりと進んでいきますが、脳血管性認知症の場合は脳梗塞やくも膜下出血等の再発を繰り返す度に症状が悪化していきます。

なので早い段階で適切な治療やリハビリを行っていれば、再発を予防できるし、症状の悪化を止める事も不可能ではありません。

介護の仕事をするなら知っておきたい脳血管性認知症の知識のまとめ

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

では最後におさらいもかねてここまでの要点をまとめていきたいと思います。

  • 脳血管性認知症を引き起こす代表的な脳血管障害は、脳卒中
  • 脳梗塞や脳出血は、動脈硬化や慢性的な高血圧、高脂血症、糖尿病と言った生活習慣病が原因で、原因の全くわからないアルツハイマー型認知症と違って、脳血管性認知症は予防策のある認知症と言える
  • 脳血管性認知症は脳卒中の激しい痛みが引き金になって発症するので、アルツハイマー型認知症と比べて発症時期がはっきりとしている場合が多い
  • 脳血管性認知症の場合は、脳がダメージを受けた場所によって症状が異なり、よく見られる症状は、実行機能障害で、仕事の要領が悪くなったり、料理が作れなくなったり、リモコンの使い方がわからなくなったり等の問題が起こる
  • 精神的に不安定になりやすく、些細なことで激怒したり、泣いたりするなど、感情を上手くコントロールすることが出来ず、感情失禁も良く見られるようになる
  • 脳血管性認知症は認知機能がまだらに障害されるので、別名「まだら認知症」とも呼ばれる事があって、このような症状が数日周期で変動してみられるのも特徴的
  • 脳血管性認知症の場合は脳梗塞やくも膜下出血等の再発を繰り返す度に症状が悪化していく

いかがだったでしょうか。

このように認知症と言っても種類によって症状は微妙に異なります。

介護の現場では、利用者の方がどのタイプの認知症なのかということも把握しておくことで、よりよい対応ができるようになるのではないでしょうか。

参考:介護職員初任者研修教材

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