「親の介護をしてきた経験を生かして介護の仕事につきたいけど、仕事と私生活の介護の違いは?」
「介護離職後の再就職先として介護施設を考えているけど、親の介護の経験は仕事にも役に立つ?」
今回はそんな疑問をお持ちの方に向けて、私生活で介護を経験してから介護の仕事に就くメリットとデメリットについてまとめてみました。
親の介護経験を通して介護の仕事に興味を持つ方も多い
介護の仕事に転職してくる人の年齢層はとても幅広いものです。
若いうちから介護の将来性に魅力を感じて福祉系の大学を卒業する人もいれば、自分の親の介護を通して介護の仕事に興味を持つ人もいます。
さらに「人のためになる」ということが、やる気ややりがいに繋がることもあり、仕事に対してモチベーションを保ちやすいメリットもあります。
しかし一方で、離職率が高い仕事でもあるのです。
せっかく福祉系の大学を出て介護施設に就職できても、すぐに辞めていく人もいます。
また「人のためになる仕事」という高い志を持って転職しても、思っていたものと違うことに驚き、辞めていく人も多いのです。
つまり、辞めていく人の共通点は「理想と現実とのギャップ」なのではないでしょうか。
どんな仕事でも、自分が思い描いていた仕事像と現実の仕事が同じであることはなく、多かれ少なかれギャップはあるものです。
それでも多くの場合、転職後や就職後にそのギャップに気が付いたとしても自分の心の中で折り合いをつけて働き続けることが多いでしょう。
しかし、介護の仕事の理想と現実とのギャップは小さいことが少ないのです。
「人のためになる仕事」と思って転職したにも関わらず、役に立っている実感が得られず、特に最初のうちは他の職員の足手まといになっているような気がすることもあります。
また「人のため」とは言っても、想像していたよりもきつい仕事が多く、耐えられなくなってしまう人もいるのです。
私生活での介護経験が転職の動機になっている人は「私生活での介護がそのまま仕事になる」と思い込まずに、介護の仕事の現場を現実として受け止める覚悟と頭の柔軟性を持っておくといいでしょう。
私生活で介護を経験してから介護の仕事につくメリット・デメリット
私生活で介護の経験を持っている人は、介護の実務経験だけでなく、介護する側の心を理解することができるのではないでしょうか。
介護施設にしても訪問介護をするにしても、利用者とうまく関係が築けるだけでは物足りない介護職員になってしまいます。
利用者の多くには家族がいます。
そして、介護職員は利用者だけではなく利用者の家族とのコミュニケーションがとても大切なのです。
若い介護職員は、体力面や明るさという強みがあります。
しかし、実際に家族の介護を経験してから介護の世界に飛び込んだ職員には、若い職員には対応できない「心の寄り添い」をすることができるのです。
また、介護はマニュアル通りには進みません。
入浴介助も教科書通りに進むことは少なく、利用者の普段の様子をよく観察して、普段と違う様子を素早く感じ取る力が必要です。
私生活で介護をしてきた人は、利用者を観察することが習慣化されている傾向があり、それは介護に関わる人にとって一番大切な能力なのではないでしょうか。
私生活で介護を経験してから介護を仕事にしたいと思う人は、それだけで介護の仕事に合っている人と言えるでしょう。
「介護業界なら求人がある」というだけで飛び込んだ人は、体力も精神面も足りずに仕事を続けることは難しくなるようです。
しかし、私生活で介護を経験している人は介護の現実をすでに知っているため、必要な体力も心の強さも理解できています。
そのうえで「介護を仕事にしたい」と思えるということは、本当に介護が好きであり、向いている人なのでしょう。
ただ、私生活で介護を経験してから介護職に飛び込む人にはデメリットもあります。
それは、自分が思っている以上に心も体も疲れている可能性があるということです。
私生活で介護をした人は、それなりに歳を重ねている人ではないでしょうか。
無事に介護を終えられたからこそ、自分の介護に自信を持ち、仕事にしたいと思えたのでしょう。
しかし、仕事とプライベートでは介護の量が違います。
私生活での介護を終えてから介護を仕事にする場合は、現実的に仕事に切り替える体力が自分にあるかを考えてみてからでも遅くはないのではないでしょうか。
仕事の介護とプライベートの介護とは何が違うのか?
私生活で介護を経験した人は、豊富な経験があるメリットと年齢と体力的なデメリットがあるという話をしました。
しかし、仕事として介護をする場合とプライベートで介護をする場合とでは大きな違いがあります。
それは、プライベートの介護が「一対一の介護」であるのに対して、仕事の介護は「複数対複数の介護」になるということです。
一対一の介護では、自分にすべてが覆いかぶさってくる時間が長いため、体力も精神力もたくさん必要でした。
しかし、複数対複数の介護になれば、自分に足りていない力を補ってくれる仲間ができるのです。
つまり、私生活での介護を終えてから転職する最大のデメリットであった「体力と年齢」の壁は、仲間に助けてもらうことで乗り越えることが可能になります。
プライベートでの介護では「自分が頑張る」という意気込みが必要だったかもしれません。
しかし、介護を仕事にするならば「自分も頑張る」という気持ちに切り替えることが大切です。
助けてもらうことは恥ずかしいことと考えず、自分に足りていない部分があれば堂々と助けを求められることも必要なスキルなのです。
助けてもらったら負い目に感じるのではなく、今度はタイミングをみて自分が助ければいいのです。
「介護の仕事は、歳を重ねてからも転職ができる」と言われる業界です。
しかし、それは働く側の心がまえ次第なのかもしれません。
私生活の介護と仕事の介護との大きな違いはチームワークです。
チームワークの必要性は、働きにくくする要因になることもありますが、働きやすくする要因になることもあります。
チームワークを味方につけることができれば、年齢や体力に足を引っ張られることなく、私生活での介護経験をいかして介護業界で働くことができるのではないでしょうか。